毎年冬場には、子供の間で下痢を伴ういわゆる胃腸風邪というのが流行ります。今年は、はじめに嘔吐を伴う(そうでない子もいますが)胃腸風邪が大流行中です。そこで、嘔吐や下痢、高度な発熱などで脱水状態になりやすい子供のために脱水症状、状態について自宅での目安や予防のお話をします。
1. 脱水状態の目安
脱水の程度を把握することが重要です。
a) 尿量
b) 口腔内の乾燥
c) 全身状態
a) 体重の変化が最も確実な評価方法ですが、なかなか頻回の体重測定は難しいため、尿量は自宅でチェックできる水分量の不足判定法の良い指標になります。
b) 水様下痢便が頻回のときには尿量がわかりにくいことがあるため、口腔内の乾燥、よく観察をすることが大切です。脱水の早期の場合は、家庭での水分摂取など (方法の詳しくは後に書いています)で脱水症状の悪化をかなり防ぐことができます。
c) ただし、動きが少ない、ぐったりしている、目がうつろであるなど全身状態が悪い場合は早急に医療機関の受診をお勧めします。
2. 脱水の治療
初期は経口(口からの)水分摂取が重要です。市販のアクアライトなど(子供用のイオンドリンク)が飲みやすく、電解質の補正にも効果があります。が、子供によって好みがあるため、湯冷ましや番茶など飲ませやすいものでも良いでしょう。ただし、果汁などは吐き気を誘発しやすいので避けたほうが良いと思われます。少量(30~50ml)から始め、飲めれば頻回に飲ませ、1日150ml/kg程度(ミルクを含める)を与えるのが理想的とは言われています。(結構な量で大変ですね、少しでもいいので頻回に飲ませましょう)一度に大量に飲ませると嘔吐することがあるので、少しずつにします。
3. 食事について
経口摂取が可能となり下痢が減少してくれば、できるだけ早く食事を再開します。嘔気がなく状態が安定していれば、ミルクなら濃度を(1/2~)2/3程度に薄めて与えます。(母乳はそのまま与えてよい。)食欲が出てきたら、早期に塩分を加えた粥、軟らかく煮たニンジン・ジャガイモ、白身魚などへと進めていきます。野菜でもあまり繊維質の多いものは避けます。
少々難しい話になりますが、腸炎で小腸の吸収上皮細胞の損傷のため乳糖分解酵素が減少し一過性の乳糖不耐症となっていることがあります。そのため脂肪や乳糖の吸収能が戻るのには時間がかかるので、完全に治まるまで乳製品を避けるようにします。また更に、脂肪の多い食物、糖分の多すぎるものは、下痢を遷延させるので注意しましょう。
以上で子供の病気で一番身近で注意したい「脱水」のお話を終わります。脱水はママやパパの知識で危険な状態になるのを避けられることが多いものです。 育児の中では避けることのできない「子供の病気」ですが、病気のときの正しいハウスケアの知識を身に付け、少しでも楽に病気を乗り越えることができるようにと思っています。
脱水の程度と治療 ~一般的な治療の目安~
a)重症
7%以上の体重減少で排尿は著しく減少し、口腔内の乾燥は著明である。意識障害や末梢循環不全を伴う。
→入院治療が必要である。
b)中等症
食欲は低下し排尿も減少、皮膚、口腔内の乾燥がある。
→外来または入院で点滴などを行う。
c)軽症
一般状態が良く、排尿が保たれており、体重減少は2~3%までである。
→経口補液を行う。少量(30~50ml)から始め、飲めれば頻回に与える。水分・電解質補充を目的としてイオン飲料(アクアライト、アクアサーナなど)を用いる。